ロックとロックンロール

 先日の記事について、某友人から「ネットに怪文書を残すな」とのご指摘を受けたので今度は少しマトモな記事を書こうと思った。反省はしていない。

 

 

 ロックが好きな人ならロックとロックンロールの違いについて考えたこと、あるのではないでしょうか。私はこの問題について14才の頃から考え続け、中学生の時に友達宅で「ロックとロックンロールは違うんやぞ」と宣ったところ、「××君(私の名前)はよく分かっている!その通り!」とお菓子と麦茶を持ってきたその友達のお母さんから絶賛お褒めのお言葉を頂戴したのであった。死角から全力で抱きつかれた感じね。ちなみにそのお母さんはQUEENの大ファンでした。いいよね、フレディ・マーキュリー

 

 さて、じゃあ具体的にロックとロックンロールは何が違うんじゃい、という話になるわけだけど、これについては偉大なる先人達の金言があり、それらを踏まえたり踏まえなかったりする中で稚拙ながら私見を述べさせていただくと(我ながらむっちゃ予防線を張る)、

 

「ロックは音楽の1ジャンルであり、

ロックンロールは感情である」

 

という言葉に集約されるのだ…!

 

 

 おいおい、ロックンロールって音楽じゃないのかよ、って思った方、その通りです。辞書的意味でいうと確かにそうなんです。

 

「ロックンロールは、1950年代半ばに現れたアメリカの大衆音楽スタイルの呼称である」

「1960年代後半、ロックンロールが進化してその枠を壊し、新たなサウンドが生まれ、それらのサウンドの総称として「ロック」という言葉が使われている」

 

 どちらもウィキペディアからの引用です。まあ確かにロックンロールから始まりそこから進化・細分化された結果として「ロック」という呼称が使われてはいるのだけど、ここで辞書的意味を語ってもあんまり価値がない。それに一口にロックと言っても沢山あるからね。ハードロック、ブルースロック、サザンロック、パンクロック、グラムロックサイケデリックロック、プログレッシブロック、ノイズロック、ガレージロック、ミクスチャーロック、オルタナティブロック、ポストロック…とか挙げたらキリがない。しかし、これらの◯◯ロックのあとに「ンロール」がつくことはまず無い。「ハードロックンロール」「パンクロックンロール」ってとても違和感がある。

 

  ということで、「ロック」とは音楽のジャンルを指すということはなんとなくお分かり頂けるのではないでしょうか。では、「ロックンロール」は…?という問いに対しては、個人的な体験を基に説明しよう。

 

 

 今まで普通に生きてきたと思っていた14才のある夜。その夜私にロックンロールが降ってきた。

 その夜、セックスピストルズ
始めて聴いた。


「ああああああああああ!!!!!」

 という感情が沸き起こった。こればっかりは上手く言葉で表現できない、ともかく、「ああああああああああ!!!!!」なのだ。とてつもない衝撃。脳みそが180度回転して人生がひっくり返った。
 どうしようもなくじっとして居られなくて、始めたばかりでロクに弾けないベースをかき鳴らしながら夜中に髪を振り乱して暴れ回った。
 ピストルズ自体はジャンルでいうとパンクロックだけど、これこそロックンロールという感情だったのだ。この体験はよく「初期衝動」と言われる感情で語られる。音楽雑誌とかでよく使われる言葉だけど、「初期衝動」はあくまでも「初期」に起こるもんだと思ってる。ロックンロールは初期じゃなくても君が音楽を好きならばいつでも起こり得る。

 

 例えば。ライブで胸が熱くなる。なぜだか涙が出る。ただただ感動して立ち尽くす。気持ちを抑えきれずモッシュの嵐に飛び込む。これらは全てロックンロールなんです。
 後先を気にせず、または考えられず、ただ、感情の坂道を転がり続ける。これがまさにロックンロール。これはまとまったり整理したり割り切れる感情ではなく、完全にカオス。ただの混沌。それが白人音楽(カントリー)と黒人音楽(R&B、ブルース)がミックスされて生まれたロックンロールたる証拠であるし、人生ってそもそもカオス。だからロックンロールは人生にすごく似ている。

 ついでにひとこと。ロックンロールは上記のように本質的にカオスを内包しているので、「綺麗な」ロックンロールってのは偽物だ。本物のロックンロールはいつもぐちゃぐちゃだし泥臭い匂いがする。

 

 そして私は人生で失敗したりつまずいたりする度にロックンロールに救われる。今までの人生、失敗したりつまずいてばかりなので何回も救われてきました。そして救われる度に、私のロックンロール原理主義が強固なものとなり、ついには「佐野のロックンローラー」と嘯くことになっているというわけです。

 

 小説を読んでも漫画を読んでも映画を観ても「ああああああああああ!!!!!」という感情は起きない。音楽だけがこの感情を引き起こすことができるのだ。だから音楽はたまらなく素晴らしい。